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注文の多い料理店 宮沢賢治

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 最近、山野金沢市長のおすすめの本を読んでいたら、すっかり読書好きになりました。
(山野市長のご推薦の本を集めたのブログ「一夜一冊」→ http://yamano4455.jugem.jp/?cid=9 )
やっぱり名作はよいです。こころにひびきます!
私からの本日のおすすめの一冊は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」です。
私の中学の国語の教科書に掲載されていました。
もちろん中間テストや期末テストでは、ここから出題されました♪
 
 楽しい読書の方法を最近考えました♪
昔の私のように、本が苦手という人におすすめです。
上手な朗読を聴きながら読むと
とても分かりやすですよ(*´∀`*)
 
 
小・中学生の夏休みの宿題にはぴったりです。
(このページをブックマークしておいてくださいね)
 

注文の多い料理店

宮沢賢治

 二人の若い 紳士 ( しんし ) が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする 鉄砲 ( てっぽう ) をかついで、 白熊 ( しろくま ) のような犬を二 疋 ( ひき ) つれて、だいぶ 山奥 ( やまおく ) の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを 云 ( い ) いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は 怪 ( け ) しからんね。鳥も 獣 ( けもの ) も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「 鹿 ( しか ) の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お 見舞 ( みまい ) もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと 倒 ( たお ) れるだろうねえ。」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
 それに、あんまり山が 物凄 ( ものすご ) いので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく 吠 ( うな ) って、それから 泡 ( あわ ) を 吐 ( は ) いて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の 眼 ( ま ) ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
 はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
「ぼくはもう 戻 ( もど ) ろうとおもう。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は 空 ( す ) いてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、 昨日 ( きのう ) の宿屋で、山鳥を 拾円 ( じゅうえん ) も買って帰ればいい。」
「 兎 ( うさぎ ) もでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
 風がどうと 吹 ( ふ ) いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「 喰 ( た ) べたいもんだなあ」
 二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
 その時ふとうしろを見ますと、立派な 一軒 ( いっけん ) の西洋造りの家がありました。
 そして 玄関 ( げんかん ) には

RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
 二人は玄関に立ちました。玄関は白い 瀬戸 ( せと ) の 煉瓦 ( れんが ) で組んで、実に立派なもんです。
 そして 硝子 ( がらす ) の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
「どなたもどうかお入りください。決してご 遠慮 ( えんりょ ) はありません」
 二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご 馳走 ( ちそう ) するんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
 二人は戸を 押 ( お ) して、なかへ入りました。そこはすぐ 廊下 ( ろうか ) になっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。
「ことに 肥 ( ふと ) ったお方や若いお方は、 大歓迎 ( だいかんげい ) いたします」
 二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
 
 
 ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ 塗 ( ぬ ) りの 扉 ( と ) がありました。
「どうも変な 家 ( うち ) だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
 そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
 二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、
「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて 支度 ( したく ) が手間取るけれどもごめん下さいと 斯 ( こ ) ういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか 室 ( へや ) の中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルに 座 ( すわ ) りたいもんだな。」
 ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い 柄 ( え ) のついたブラシが置いてあったのです。
 扉には赤い字で、
「お客さまがた、ここで 髪 ( かみ ) をきちんとして、それからはきもの
 の 泥 ( どろ ) を落してください。」
と書いてありました。
「これはどうも 尤 ( もっと ) もだ。僕もさっき玄関で、山のなかだとおもって見くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほど 偉 ( えら ) い人たちが、たびたび来るんだ。」
 そこで二人は、きれいに髪をけずって、 靴 ( くつ ) の泥を落しました。
 そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや 否 ( いな ) や、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと室の中に入ってきました。
 二人はびっくりして、 互 ( たがい ) によりそって、扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう 途方 ( とほう ) もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
 扉の内側に、また変なことが書いてありました。
「鉄砲と 弾丸 ( たま ) をここへ置いてください。」
 見るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど偉いひとが始終来ているんだ。」
 二人は鉄砲をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
 また黒い扉がありました。
「どうか 帽子 ( ぼうし ) と 外套 ( がいとう ) と靴をおとり下さい。」
「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
 二人は帽子とオーバーコートを 釘 ( くぎ ) にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
 扉の裏側には、
「ネクタイピン、カフスボタン、 眼鏡 ( めがね ) 、 財布 ( さいふ ) 、その他金物類、
 ことに 尖 ( とが ) ったものは、みんなここに置いてください」
と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。 鍵 ( かぎ ) まで 添 ( そ ) えてあったのです。
「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。 金気 ( かなけ ) のものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと 斯 ( こ ) う云うんだろう。」
「そうだろう。して見ると 勘定 ( かんじょう ) は帰りにここで 払 ( はら ) うのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
 二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと 錠 ( じょう ) をかけました。
 すこし行きますとまた 扉 ( と ) があって、その前に 硝子 ( がらす ) の 壺 ( つぼ ) が一つありました。扉には 斯 ( こ ) う書いてありました。
「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」
 みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。 室 ( へや ) のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」
 二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。
 それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、
「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」
と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。
「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意 周到 ( しゅうとう ) だね。」
「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
 するとすぐその前に次の戸がありました。
「料理はもうすぐできます。
 十五分とお待たせはいたしません。
 すぐたべられます。
 早くあなたの頭に 瓶 ( びん ) の中の香水をよく 振 ( ふ ) りかけてください。」
 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。
 ところがその香水は、どうも 酢 ( す ) のような 匂 ( におい ) がするのでした。
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
「まちがえたんだ。下女が 風邪 ( かぜ ) でも引いてまちがえて入れたんだ。」
 二人は扉をあけて中にはいりました。
 扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。

  
小・中学生の夏休みの宿題にはぴったりです。
(このページをブックマークしておいてくださいね)
                      ーつづくー

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